最終更新: 2026-04-19
国内の醤油メーカーは2024年時点で1,013社。2000年の1,611社から約600社が姿を消しました(しょうゆ情報センター調べ)。メーカーが減少する一方で、スーパーの醤油売り場にはさまざまな商品が並び、「結局どの醤油を選べばよいのかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、醤油の品質を見極める鍵は「原材料表示」にあります。ラベルに記載されたわずか数行の情報から、大豆の種類、製法、添加物の有無まで読み取ることができるのです。
この記事では、醤油の原材料を一つひとつ解説し、ラベルだけで本物の醤油を見分ける3つの基準をお伝えします。まず原材料の基礎知識から始め、次にJAS規格の製法分類を整理し、最後に用途別の選び方をご紹介します。
醤油の原材料を知る|大豆・小麦・食塩の役割
醤油は、大豆・小麦・食塩という3つの基本原材料から造られます。それぞれが醤油の味わい・香り・色に深く関わっています。
| 原材料 | 醤油における役割 | 味わいへの影響 |
|---|---|---|
| 大豆 | たんぱく質がアミノ酸に分解され、うま味の源になる | うま味・コクの深さを決定 |
| 小麦 | でんぷんが糖に変わり、香りと甘みを生む | 香ばしさ・華やかな香りを形成 |
| 食塩 | 発酵の速度を調整し、雑菌の繁殖を防ぐ | 塩味のバランス・保存性を確保 |
一般的な濃口醤油の場合、大豆と小麦をほぼ等量(1:1)で使用し、食塩水と合わせて仕込みます。この比率が変わると醤油の性格も大きく変わります。たとえばたまり醤油は大豆の比率が極めて高く、小麦をほとんど使いません。その結果、濃厚なうま味と独特のとろみが生まれるのです。
醸造の現場では、大豆の質が醤油の仕上がりを左右するため、蔵元ごとに産地や品種を厳選しています。特に小規模な蔵では、地元産の大豆にこだわるところも少なくありません。
丸大豆と脱脂加工大豆の違い|原材料表示の最重要チェックポイント
醤油選びで最も注目すべきは「大豆」の種類です。原材料表示には「大豆」または「脱脂加工大豆」と記載されており、この違いが醤油の風味と価格に直結します。
丸大豆とは
丸大豆とは、油脂分を取り除かずにそのまま使用する大豆のことです。大豆に含まれる約20%の油脂が醸造の過程でグリセリンなどに分解され、まろやかな口当たりと深みのある味わいを生み出します。原材料表示では「大豆」と記載されます。
脱脂加工大豆とは
脱脂加工大豆は、あらかじめ大豆から油脂分を取り除いたものです。第二次世界大戦前後から普及し、現在では全生産量の約82%が脱脂加工大豆を使用しています(しょうゆ情報センター調べ)。原材料表示には「脱脂加工大豆」と明記されます。
| 比較項目 | 丸大豆 | 脱脂加工大豆 |
|---|---|---|
| 原材料表示 | 「大豆」 | 「脱脂加工大豆」 |
| 油脂分 | 約20%含む | あらかじめ除去済み |
| 風味の特徴 | まろやかで深いうま味 | キレのある香りと強いうま味 |
| 醸造期間 | やや長い(油脂の分解に時間がかかる) | 効率的に醸造可能 |
| 価格帯 | やや高め | 比較的手頃 |
| 国内シェア | 約18% | 約82% |
ここで注意したいのは、脱脂加工大豆が「劣っている」というわけではない点です。蔵元の間でも「脱脂加工大豆のほうがうま味成分を効率よく引き出せる」として、あえて選ぶ職人もいます。大切なのは、自分がどのような味わいを求めているかを理解したうえで選ぶことです。
JAS規格で読み解く3つの製法分類
醤油のラベルには製法が記載されています。JAS(日本農林規格)では、醤油の製造方法を3つに分類しています。この分類を知っておくと、ラベルを見るだけで醤油の造り方がわかります。
| 製法 | 特徴 | 国内生産比率 |
|---|---|---|
| 本醸造 | 麹の力だけで発酵・熟成させる伝統的な製法。6〜8ヶ月以上かけて造る | 約80% |
| 混合醸造 | 本醸造の諸味にアミノ酸液を加えて1ヶ月以上熟成させる | 一部地域で流通 |
| 混合 | 本醸造醤油にアミノ酸液を直接加えて製造する | 一部地域で流通 |
国内で生産される醤油の約80%は本醸造方式です(農林水産省「しょうゆの製造法」)。本醸造の中でも、醸造を促進するための酵素や食品添加物を一切使用しないものだけが「天然醸造」と名乗ることができます。
ラベルで製法を確認する方法
醤油のラベルには「本醸造」「混合醸造」「混合」のいずれかが記載されています。記載がない場合は、原材料欄に「アミノ酸液」「たんぱく加水分解物」といった表記がないかを確認してください。これらの記載がなければ本醸造です。
また「天然醸造」の表示は、JAS規格で厳密に定められた条件を満たした醤油だけに許されるものです。具体的には、本醸造方式であること、かつ醸造促進のための酵素や食品添加物を使用しないことが条件となります。
醤油の種類と違いについては、5つの分類(濃口・淡口・たまり・再仕込み・白醤油)をまとめた記事で詳しく解説しています。
醤油の原材料で選ぶ3つの基準
ここまでの知識をふまえ、醤油を選ぶ際にラベルで確認すべき3つの基準を整理します。
| 選ぶ基準 | チェックポイント | 確認場所 |
|---|---|---|
| 基準1: 大豆の種類 | 「大豆」(丸大豆)か「脱脂加工大豆」か | 原材料名欄の先頭 |
| 基準2: 製法の分類 | 「本醸造」「混合醸造」「混合」のいずれか | ラベル表面または側面 |
| 基準3: 添加物の有無 | アルコール、調味料(アミノ酸等)、甘味料、保存料の有無 | 原材料名欄のスラッシュ「/」以降 |
基準1: 大豆の種類で選ぶ
原材料名欄の最初に注目してください。「大豆」と書かれていれば丸大豆使用、「脱脂加工大豆」と書かれていれば脱脂加工大豆使用です。まろやかな味わいを求めるなら丸大豆醤油、キレのある味を求めるなら脱脂加工大豆の醤油が適しています。
さらにこだわるなら、「国産大豆」の表記も確認しましょう。国産大豆を使用している場合、原材料名に「大豆(国産)」と産地が併記されます。
基準2: 製法で選ぶ
本醸造であれば、麹の力で自然に発酵・熟成させた醤油です。さらに「天然醸造」と表示されていれば、酵素や添加物を一切使わずに造られた醤油であることが保証されます。
基準3: 添加物の有無で選ぶ
2020年4月に完全施行された食品表示法により、原材料と添加物はスラッシュ「/」で区切って表記することが義務づけられています。スラッシュの後に何も記載がなければ、添加物不使用の醤油です。
よく見られる添加物には以下のものがあります。
| 添加物名 | 添加の目的 |
|---|---|
| アルコール(酒精) | 白カビの発生を抑える保存目的 |
| 調味料(アミノ酸等) | うま味の補強 |
| 甘味料(ステビア、甘草等) | 甘みの付加 |
| カラメル色素 | 色の調整 |
| 保存料(安息香酸Na等) | 長期保存 |
無添加の醤油を具体的な銘柄で探したい方には、醸造方式と原材料にこだわった7銘柄を紹介した記事が参考になります。
蔵元が語る原材料選定のこだわり|醸造の現場から
競合記事では「消費者としてのラベルの読み方」が中心ですが、醸造ナビでは「造る側の視点」からも原材料の重要性をお伝えします。
醤油蔵の職人にとって、原材料の選定はその年の醤油の出来を左右する最も重要な仕事の一つです。特に以下の3点が現場で重視されています。
1つ目は「大豆のたんぱく質含有量」です。たんぱく質が多い大豆ほど、分解されて生まれるアミノ酸(うま味成分)の量が増えます。蔵元によっては、毎年仕入れる大豆のたんぱく質含有量を測定し、仕込みの配合を微調整しています。
2つ目は「小麦の品種と焙煎度合い」です。小麦は炒る温度と時間によって、生まれる香り成分が大きく変わります。高温で短時間炒ると香ばしい香りが立ち、低温でじっくり炒ると穏やかな甘い香りになります。蔵ごとに焙煎の方法が異なるのは、この香りの違いを生み出すためです。
3つ目は「塩の品質」です。精製塩を使う蔵もあれば、天日塩やにがりを含む粗塩を使う蔵もあります。にがりに含まれるマグネシウムが発酵に微妙な影響を与えるとされ、塩の選択は蔵元のこだわりが表れる部分です。
醸造の仕事に興味がある方は、醸造業界の就職・求人情報もあわせてご覧ください。蔵元で働くことで、原材料選定の現場に立ち会えるかもしれません。
用途別おすすめの醤油タイプ早見表
醤油は料理の用途に合わせて選ぶことで、味わいが格段に引き立ちます。原材料と製法の組み合わせから、用途別に適したタイプを整理しました。
| 用途 | おすすめタイプ | 原材料の特徴 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 刺身・冷奴 | 丸大豆・本醸造の濃口醤油 | 大豆(丸大豆)、小麦、食塩 | まろやかさが素材の味を引き立てる |
| 煮物・照り焼き | 脱脂加工大豆・本醸造の濃口醤油 | 脱脂加工大豆、小麦、食塩 | キレのあるうま味が煮汁に溶け込みやすい |
| 吸い物・茶碗蒸し | 淡口醤油 | 大豆または脱脂加工大豆、小麦、食塩 | 色が薄く、素材の色味を活かせる |
| 焼き餅・せんべい | たまり醤油 | 大豆(主体)、食塩 | 濃厚なうま味と粘度がタレに適す |
| 白身魚の刺身 | 白醤油 | 小麦(主体)、大豆、食塩 | 繊細な甘みが白身の味を邪魔しない |
日常使いにはコストパフォーマンスに優れた脱脂加工大豆の本醸造醤油が適しています。一方、刺身やかけ醤油として素材の味と向き合う場面では、丸大豆の天然醸造醤油がその持ち味を発揮します。
原材料表示の実例で読み方を練習
実際のラベルを想定して、原材料表示の読み方を練習してみましょう。
例1: シンプルな天然醸造醤油
原材料名: 大豆(国産)、小麦(国産)、食塩
この醤油は、国産の丸大豆と国産小麦を使い、添加物を一切使用していないことがわかります。スラッシュ「/」の記載がないため、食品添加物は不使用です。製法表示に「天然醸造」とあれば、酵素も不使用の伝統的な造り方です。
例2: 一般的な量産醤油
原材料名: 脱脂加工大豆(遺伝子組換えでない)、小麦、食塩 / アルコール
脱脂加工大豆を使用し、保存のためにアルコール(酒精)が添加されています。本醸造方式で造られていれば品質に問題はありませんが、アルコールの風味がわずかに残る場合があります。
例3: 調味料入り醤油
原材料名: 脱脂加工大豆、小麦、食塩、大豆たんぱく加水分解物 / 調味料(アミノ酸等)、甘味料(ステビア)、カラメル色素
添加物が複数使われており、うま味・甘み・色を人工的に補っている醤油です。混合方式で製造されている可能性が高いタイプです。
この3つの例を比較すると、発酵と腐敗の違いにも通じる話ですが、醤油の「発酵」の力を最大限に活かしているのは添加物に頼らない醤油だということがわかります。
醤油の原材料に関するよくある質問
Q1: 「丸大豆醤油」は「脱脂加工大豆の醤油」より美味しいのですか?
一概には言えません。丸大豆醤油はまろやかで深みのある味わいが特徴ですが、脱脂加工大豆の醤油はキレのある香りと強いうま味が持ち味です。料理の用途や好みによって使い分けるのがおすすめです。プロの料理人でも、煮物には脱脂加工大豆の醤油を選ぶケースがあります。
Q2: 「遺伝子組換えでない」の表示がない醤油は避けるべきですか?
醤油の場合、醸造過程でたんぱく質が完全に分解されるため、最終製品からは遺伝子組換えDNAやたんぱく質が検出されません。そのため、JAS法上は醤油に遺伝子組換え表示の義務はありません。ただし、気になる方は「遺伝子組換えでない」または「国産大豆使用」の表示がある醤油を選ぶとよいでしょう。
Q3: 「天然醸造」と「本醸造」の違いは何ですか?
本醸造は、麹の力で発酵・熟成させる製法の総称で、国内生産の約80%を占めます。天然醸造は本醸造の中でも、醸造を促進する酵素や食品添加物を一切使わないものだけに表示が許される、より厳格な基準です。天然醸造の醤油は発酵に1年以上かける蔵も珍しくありません。
Q4: 醤油の原材料に「アルコール」と書いてあるのはなぜですか?
開栓後に白カビ(産膜酵母)が発生するのを防ぐために、醸造後にアルコール(酒精)を添加しています。品質には問題ありませんが、加熱せずにそのまま使う場合、わずかにアルコールの風味を感じることがあります。アルコール無添加の醤油を選びたい場合は、原材料名の「/」以降にアルコールの記載がないものを探してください。
Q5: 小麦アレルギーでも使える醤油はありますか?
たまり醤油は、原材料に小麦をほとんど、または全く使用しないため、小麦アレルギーの方に選ばれることがあります。ただし、製造過程で小麦が微量に混入する可能性があるため、必ず原材料表示とアレルゲン表示を確認してください。「小麦を使用していない」旨の表示がある商品を選ぶのが安心です。[たまり醤油の詳しい特徴と製法](https://jozo-navi.jp/soy-sauce/tamari-shoyu-towa/)については別記事で解説しています。
Q6: 醤油の原材料に使われる食塩の種類は味に影響しますか?
影響します。精製塩は塩化ナトリウムの純度が高くシャープな塩味になりますが、天日塩や粗塩にはマグネシウムやカルシウムなどのミネラルが含まれ、まろやかな味わいになります。ただし、原材料表示には「食塩」としか記載されないため、塩の種類を知りたい場合はメーカーの公式サイトや問い合わせで確認する必要があります。
関連記事: 醤油の賞味期限|開封後はいつまで?種類・容器別の目安と正しい保存法
関連記事: 醤油の製造工程を徹底解説|原料から火入れまで全6段階の仕組み
まとめ:醤油の原材料と選び方のポイント
醤油の原材料と選び方について、ポイントを整理します。
- 醤油の基本原材料は大豆・小麦・食塩の3つ。それぞれが味・香り・保存性に影響する
- 原材料表示で「大豆」なら丸大豆、「脱脂加工大豆」なら油脂を除去した大豆を使用
- JAS規格の製法は本醸造・混合醸造・混合の3分類。国内の約80%は本醸造方式
- ラベルで確認すべきは「大豆の種類」「製法」「添加物の有無」の3つ
- 用途に合わせて使い分けることで、料理の味わいが引き立つ
まずはご自宅にある醤油のラベルを裏返して、原材料名を確認することから始めてみてください。それだけで、醤油の見え方が変わるはずです。
醤油の種類ごとの違いや使い分けを知りたい方は、あわせてお読みいただくとより理解が深まります。醸造に関する専門用語については発酵・醸造用語集もご活用ください。
参考情報
- しょうゆ情報センター「原料と製造法」(https://www.soysauce.or.jp/)— 醤油の原材料・製法に関する公的情報
- 農林水産省「しょうゆの製造法」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/c_propanol/soysauce.html)— JAS規格と製法分類の公式解説
- 職人醤油「丸大豆と脱脂加工大豆」(https://s-shoyu.com/knowledge/0503/)— 丸大豆・脱脂加工大豆の違いの詳細解説
- 日本醤油技術センター「しょうゆのJASについて」(https://www.shoyu.or.jp/jas)— JAS規格の技術的基準


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