九月も半ばに差し掛かり、仕込みシーズンへ向けた準備が各地の蔵で静かに進む時期となった今週。発酵・醸造の世界では、震災を乗り越えて再起を誓う老舗味噌蔵の物語と、次世代を担う若手経営者たちの研修会、そして酒蔵が挑む新分野の商品開発、博物館発の異色コラボスイーツまで、伝統と挑戦が交差する話題が並んだ一週間だった。
味噌・醤油蔵
熊本地震で全壊した老舗味噌蔵「日々麹舎」、5代目の妻が再建を誓う
Yahoo!ニュースが報じたところによると、熊本地震でみそ工場の外壁が全て倒壊した熊本県の老舗味噌蔵「日々麹舎」において、5代目の妻が「立ち上がらんといかんでしょ」と再建への強い思いを語ったことが明らかになりました。創業から275年という長い歴史を持つ蔵が、地震という不可抗力によって製造設備を失った衝撃は計り知れませんが、そこから立ち上がろうとする経営者の言葉には、地域に根付いた発酵文化を絶やさないという強い覚悟がにじみます。
同じ蔵に関連する話題として、アットプレスは「がまだせ熊本! 日々麹舎 げんき祭」と題したイベントが、菊陽店・唐人町本店・上乃裏店の3店舗で9月19日から23日にかけて開催されることも伝えています。震災からの再建の道のりを歩みながら、地域住民との交流の場を絶やさずに設けようとする姿勢は、老舗蔵が果たすべき役割の一つを体現していると言えるでしょう。木桶や麹室といった醸造設備は一度失われると再建に長い年月を要しますが、275年という歴史を積み重ねてきた蔵付き菌や仕込みの技術は、設備以上にかけがえのない資産です。全国の老舗味噌蔵が歩んできた道のりについては「味噌の歴史|起源から1300年の変遷を年表で徹底解説【保存版】」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
(情報元:Yahoo!ニュース・アットプレス)
全国味噌青年部会、都城市で秋の研修会を開催
dメニューニュースおよび食品産業新聞社ニュースWEBが報じたところによると、全国味噌青年部会による秋の研修会が宮崎県都城市で開催され、全国各地から若手経営者が集まったことが明らかになりました。研修会では懇親会や工場見学も実施されたとみられ、業界の次世代を担う経営者たちが地域を越えて交流を深める貴重な機会となったようです。
味噌業界は家業を継ぐ形で経営に携わる若手が多く、こうした青年部会の活動は、単なる情報交換にとどまらず、後継者同士が互いの蔵の取り組みを学び合い、業界全体の底上げにつなげる役割を担っています。工場見学を通じて他蔵の設備や仕込みの工夫を直接目にする機会は、独自に蔵を営んでいるだけでは得がたい視点を養う場ともなります。醸造業界で働くことを目指す方に向けては「醸造家・蔵人の仕事内容と1日のスケジュール|仕込み期から出荷期まで季節別に徹底解説」でも現場のリアルを紹介しています。
(情報元:dメニューニュース・食品産業新聞社ニュースWEB)
発酵食品トレンド
信州みそを使ったスイーツが松本市立博物館で販売開始
shimintimes.co.jpが報じたところによると、長野県の松本市立博物館において、信州みそを使用したスイーツが新たに販売開始されたことが明らかになりました。博物館という文化施設が地域の発酵調味料とスイーツという異色の組み合わせを打ち出したことは、味噌の新たな消費シーンを切り開く試みとして注目に値します。
味噌は塩味とうま味を併せ持つ発酵調味料であり、甘みとの組み合わせは「みそ大福」や「みそキャラメル」など、これまでも菓子の世界で親しまれてきました。麹菌が大豆のたんぱく質を分解して生み出すアミノ酸のうま味と、麹由来の自然な甘みが、スイーツの味わいに奥行きを与える点が、こうしたコラボレーションの成立を支えています。地域の文化施設が発信源となることで、普段は味噌に馴染みの薄い観光客層にも発酵食品の魅力が届く効果も期待できます。発酵食品と健康・美容の観点からの掘り下げについては「発酵食品の腸活効果とは?醸造の科学から読み解く仕組みと実践法」でも解説しています。
(情報元:shimintimes.co.jp)
醸造技術・研究
松井酒造、鳥取県内限定で「とっとりビール」シリーズ3種を新発売
ニコニコニュースが報じたところによると、酒蔵の松井酒造が鳥取県内限定で「とっとりビール」シリーズ3種を新たに発売したことが明らかになりました。日本酒の醸造を本業とする蔵がビール造りに参入する動きは、近年のクラフトビールブームの広がりとともに全国各地で見られるようになっています。
日本酒とビールでは主原料や糖化の方法が異なるものの、温度管理・発酵制御・微生物のコントロールといった醸造工学の基礎は共通する部分が多く、酒蔵が培ってきた技術と設備を転用しやすい分野でもあります。地域限定で展開することで、地元の観光客や県内消費者に向けた新たな商品ラインとして定着を図る狙いもうかがえます。日本酒蔵がビール醸造という新分野に挑む道筋については「クラフトビール醸造の始め方|未経験から醸造家への道筋を解説」でも詳しく紹介しています。
(情報元:ニコニコニュース)
業界ニュース
無添加だし専門店「だし尾粂」、神奈川県初出店で横浜ベイクォーターに2026年12月オープン
ニコニコニュースが報じたところによると、無添加だし専門店「だし尾粂」が神奈川県初の店舗として横浜ベイクォーターに2026年12月にオープンすることが明らかになりました。だしは味噌・醤油と並んで日本の発酵・うまみ文化を支える存在であり、無添加を掲げる専門店の都市部への進出は、素材本来の風味を重視する消費者ニーズの高まりを反映していると考えられます。
近年は共働き世帯の増加や時短調理へのニーズを背景に、家庭で一から出汁を取る機会が減少傾向にある一方で、「本物の味」を求める消費者が専門店やギフト需要へと向かう二極化も進んでいます。だし専門店が商業施設という人通りの多い立地に出店することは、発酵・うまみ文化への入り口を広げるという意味でも歓迎すべき動きです。
(情報元:ニコニコニュース)
今週の発酵・醸造業界まとめ
| カテゴリ | 主なトピック | 注目ポイント |
|---|---|---|
| 味噌蔵 | 熊本「日々麹舎」震災復興と秋の「げんき祭」開催 | 275年の歴史を持つ蔵が震災を乗り越え再建へ、地域交流も継続 |
| 味噌業界 | 全国味噌青年部会が都城市で秋の研修会 | 若手経営者が全国から集まり工場見学・懇親を通じて次世代を育成 |
| 発酵食品トレンド | 松本市立博物館で信州みそスイーツ販売開始 | 文化施設発の異色コラボが味噌の新たな消費シーンを開拓 |
| 醸造技術 | 松井酒造「とっとりビール」シリーズ3種発売 | 日本酒蔵の醸造技術がビール造りへ応用され地域限定で展開 |
| 業界動向 | 無添加だし専門店「だし尾粂」が横浜に神奈川初出店 | うまみ文化への関心の高まりが都市部の専門店進出を後押し |
今週の発酵・醸造業界は、震災という試練を乗り越えようとする老舗蔵の姿と、業界の未来を担う若手経営者たちの学び合い、そして酒蔵やだし専門店が新たな市場を切り開く挑戦が同時に浮かび上がる一週間でした。熊本「日々麹舎」の再建に向けた強い意志は、木桶や設備が失われてもなお受け継がれる蔵の魂を感じさせるものであり、同時に開催される「げんき祭」は、地域とともに歩む蔵の姿勢を象徴しています。
一方で、都城市に集った全国味噌青年部会の若手経営者たちの姿は、味噌業界の次世代が着実に育っていることを示しています。松井酒造の新商品開発や、だし尾粂の都市部進出といった動きも、伝統的な醸造・発酵文化が形を変えながら新しい消費者層へと届いていく好例といえるでしょう。
来週以降も、秋の仕込みシーズンを控えた各地の蔵の動きや、震災復興に向けた「日々麹舎」の続報に引き続き注目していきます。
参考記事
- Yahoo!ニュース「熊本地震でみそ工場の外壁が全て倒壊したが…『立ち上がらんといかんでしょ』5代目の妻が再建へ強い思い」(2026-09-11)
- アットプレス「地震を乗り越え、熊本を元気に! 創業275年の老舗味噌蔵が『がまだせ熊本! 日々麹舎 げんき祭』を 日々麹舎(菊陽店・唐人町本店・上乃裏店)にて 9月19日(土)~23日(水)(祝)開催」(2026-09-11)
- dメニューニュース「【全国味噌青年部会】秋の研修会開催、都城市に若手経営者集まる、懇親会や工場見学も」(2026-09-09)
- 食品産業新聞社ニュースWEB「【全国味噌青年部会】秋の研修会開催、都城市に若手経営者集まる、懇親会や工場見学も」(2026-09-09)
- shimintimes.co.jp「信州みそ使ったスイーツ誕生! 松本市立博物館で販売」(2026-09-12)
- ニコニコニュース「【新商品】鳥取県内限定販売!松井酒造より『とっとりビール』シリーズ3種が新登場」(2026-09-08)
- ニコニコニュース「神奈川県初の店舗出店!~横浜ベイクォーターに無添加だし専門店『だし尾粂』が2026年12月にオープン!」(2026-09-08)


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