発酵バターの作り方|乳酸菌で仕込む本格レシピと失敗しないコツ

発酵バターの作り方|乳酸菌で仕込む本格レシピと失敗しないコツ 漬物・発酵食品

最終更新: 2026-06-29

ヨーロッパでは、バターといえば発酵バターが主流です。日本で広く使われている「甘性バター」とは異なり、乳酸菌の力でクリームを発酵させてから仕込むことで、独特のコクと芳醇な香りが生まれます。「市販の発酵バターは高価だけれど、自分で作れるのだろうか」「発酵の温度や時間はどれくらいが正解なのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。この記事では、家庭で実践できる発酵バターの作り方を5ステップで丁寧に解説し、さらに風味の鍵を握る「ジアセチル」の生成メカニズムや、失敗しないための温度管理のポイントまでお伝えします。まず発酵バターの基礎知識を整理し、次に具体的な仕込み手順、そして市販品との比較や活用法をご紹介します。

発酵バターとは?仕込む前に知っておきたい基礎知識

発酵バターとは、バターの原料となるクリーム(乳脂肪)に乳酸菌を加えて発酵させたあと、撹拌して固形脂肪分を分離させたバターのことです。英語では「Cultured Butter」と呼ばれ、ヨーロッパでは紀元前から続く伝統的な製法として知られています。

もともとヨーロッパでは、牛乳からクリームを分離するまでに時間がかかり、その間に自然と乳酸発酵が進んでいました。つまり、歴史的にはバターといえば発酵バターだったのです。一方、日本では明治時代以降に近代的な製法(遠心分離機による迅速なクリーム分離)が導入されたため、発酵させない「甘性バター」が主流となりました。

項目 発酵バター 甘性バター(非発酵)
製法 クリームを乳酸菌で発酵→撹拌 クリームをそのまま撹拌
風味 コク深く、ほのかな酸味と芳醇な香り すっきりとしたミルクの風味
主な香気成分 ジアセチル(バター様香気) ラクトン類が中心
主流地域 フランス、ドイツ、北欧など 日本、アメリカ、イギリスなど
代表的な製品 エシレ、イズニー、よつ葉発酵バター 雪印、明治、よつ葉(甘性)

発酵バターの風味を決める最大の要因は、乳酸菌が生み出す「ジアセチル」という香気成分です。ジアセチルは、乳酸菌がクエン酸を代謝する過程で生成される化合物で、バター特有の芳醇な香りのもとになっています。この仕組みについては、後ほど詳しく解説します。

発酵バターは風味だけでなく、料理やお菓子づくりにおいても活躍します。クロワッサンやパイ生地に使えば、焼き上がりの香りが格段に豊かになります。トーストに塗るだけでも、甘性バターとの違いを実感できるでしょう。

自家製発酵バターに必要な材料と道具

発酵バターの仕込みに必要な材料は、驚くほどシンプルです。乳酸菌の「種」として使うスターター(発酵種)の選び方によって、仕上がりの風味が変わります。

材料・道具 目安の量・仕様 備考
生クリーム 200ml 乳脂肪分42%以上が望ましい。植物性脂肪混合は不可
プレーンヨーグルト 大さじ1(約15g) 無糖タイプ。スターターとして使用
小さじ1/4~1/2 有塩にする場合。無塩でも可
清潔なガラス瓶 500ml程度 蓋付きのメイソンジャーなど
ボウル 1個 氷水用
ハンドミキサーまたは泡立て器 1台 フードプロセッサーでも代用可
ザル・ガーゼ(さらし布) 各1 バターミルクの分離用
温度計 1本 発酵温度の管理に使用

ここで注目したいのが、スターターの選択です。一般的にはプレーンヨーグルトを使いますが、スターターの種類によって風味の方向性が異なります。

スターター 含まれる主な菌 風味の特徴 入手しやすさ
プレーンヨーグルト ブルガリア菌、サーモフィルス菌 まろやかな酸味、親しみやすい風味 スーパーで購入可
ケフィアグレイン 乳酸菌+酵母の複合体 複雑な香り、やや強い酸味 通販で入手可
バターミルク(海外製) メソフィリック乳酸菌 ヨーロッパの発酵バターに近い風味 輸入食品店、通販
サワークリーム 乳酸菌(既に発酵済み) 安定した酸味、初心者向け スーパーで購入可

初めて仕込む場合は、プレーンヨーグルトかサワークリームを使う方法がおすすめです。入手しやすく、失敗のリスクも低いためです。発酵食品づくりに慣れてきたら、ケフィアグレインやバターミルクに挑戦すると、より本格的な風味を楽しめます。

生クリームは「純乳脂肪」と表示されたものを選んでください。植物性脂肪が混合されたコンパウンドクリームでは、脂肪の結晶構造が異なるため、うまくバターに固まりません。乳脂肪分は35%以上であれば作れますが、42%以上のものを使うと収量が多くなり、風味も濃厚に仕上がります。

発酵バターの作り方【5ステップで解説】

Step 1:生クリームにスターターを加えて混ぜる

清潔なガラス瓶に生クリーム200mlを注ぎ、プレーンヨーグルト大さじ1を加えます。清潔なスプーンで全体が均一になるまでよく混ぜてください。

ここでのポイントは「清潔さ」です。発酵食品づくりの基本として、使用する容器やスプーンは事前に熱湯消毒しておきましょう。雑菌が入ると、発酵ではなく腐敗に進んでしまうことがあります。

Step 2:40℃前後で6〜12時間発酵させる

蓋を軽く閉め、40〜45℃の環境で6〜12時間置きます。ヨーグルトメーカーがあれば温度設定が楽ですが、ない場合は以下の方法で代用できます。

  • 炊飯器の保温モード(蓋を開けた状態でタオルをかける)
  • 発泡スチロールの保温箱に湯たんぽと一緒に入れる
  • 夏場は室温(28〜32℃)でも可。その場合は12〜24時間に延長する

発酵が進むと、生クリームがとろりとした「サワークリーム」の状態になります。表面にうっすら酸味のある香りが漂い、スプーンですくうともったりとした粘度があれば成功です。

発酵の温度と時間は風味に直結します。温度が高すぎる(50℃以上)と乳酸菌が死滅し、低すぎる(25℃以下)と発酵が極端に遅くなります。発酵の温度管理は、味噌や甘酒の仕込みと同様に、発酵バターでも品質を左右する重要な工程です。

Step 3:サワークリームを撹拌して脂肪分を分離する

発酵が完了したサワークリームを冷蔵庫で1〜2時間冷やしてから、次の工程に進みます。冷やすことで脂肪分が固まりやすくなり、分離がスムーズに進みます。

冷えたサワークリームをボウルに移し、ハンドミキサーの低速で撹拌を始めます。最初はホイップクリームのようにふわふわと膨らみますが、そのまま撹拌を続けてください。3〜5分ほどすると、突然ボソボソとした塊(バター粒)と白い液体(バターミルク)に分離します。

この分離の瞬間が、バターづくりの醍醐味です。脂肪球の膜が撹拌によって壊れ、脂肪同士がくっつき合って固形のバターになります。分離したらすぐに撹拌を止めてください。

ハンドミキサーがない場合は、蓋付きの瓶にサワークリームを入れて力強く振り続ける方法でも作れます。10〜15分ほど振り続けると分離が起こります。

Step 4:バターを洗って水分を抜く

ザルにガーゼを敷き、分離したバター粒とバターミルクを注ぎ入れます。バターミルクをしっかり分離したら、バター粒をガーゼで包んだまま冷水で2〜3回洗います。

この「洗い」の工程は、バターの保存性を高めるために欠かせません。バターミルクが残っていると、そこに含まれるタンパク質や乳糖が原因で日持ちが悪くなります。水が透明になるまで丁寧に洗いましょう。

洗い終わったら、ガーゼで包んだバターをぎゅっと絞り、余分な水分を除きます。ヘラやスプーンの背を使って押しつぶすようにすると、さらに水分が抜けます。

分離したバターミルクは捨てずに取っておいてください。パンケーキやスコーンの生地に加えると、ふんわりとした食感と爽やかな酸味が加わります。スープやシチューのベースに使うのもおすすめです。

Step 5:成形して完成

水分を抜いたバターに、お好みで塩(小さじ1/4〜1/2)を加えて練り込みます。無塩のまま仕上げることもできます。

ラップやクッキングシートで棒状に包み、冷蔵庫で1時間ほど冷やし固めれば、自家製発酵バターの完成です。

生クリーム200mlから、おおよそ80〜100gの発酵バターが仕上がります。

発酵バターの風味を決める「ジアセチル」の生成メカニズム

発酵バターの芳醇な香りは、偶然の産物ではありません。乳酸菌が生み出す「ジアセチル(diacetyl)」という化合物が、あの独特のバター香のもとです。

ジアセチルが生まれるまでのプロセスを簡単に追ってみましょう。乳酸菌(特にLactococcus属やLeuconostoc属)は、クリームに含まれるクエン酸を取り込み、細胞内でピルビン酸に変換します。このピルビン酸から「α-アセト乳酸」が合成され、さらに酸化的な脱炭酸反応を経てジアセチルが生成されます(日本醸造協会誌, 99巻5号, 2004年)。

興味深いのは、ジアセチルの「適量」が文化圏によって異なる点です。ヨーロッパでは2mg/L程度のジアセチル濃度が好まれるのに対し、日本では0.5mg/L程度が好まれるとされています。自家製で仕込む場合、発酵時間を短め(6〜8時間)にすると穏やかな風味に、長め(12時間以上)にするとヨーロッパ風の力強い風味に近づきます。

このジアセチルの生成と分解は、乳酸菌の種類や発酵条件によって大きく変わります。味噌や醤油の醸造においても、微生物の代謝産物が風味を左右するのと同じ原理です。発酵バターもまた、醸造の技術と知恵が詰まった食品だといえるでしょう。

失敗しないためのコツ・注意点

自家製発酵バターは手順こそシンプルですが、いくつかのポイントを押さえておくと仕上がりが安定します。

よくある失敗 原因 対策
発酵が進まない 温度が低すぎる(25℃以下) 温度計で40〜45℃を維持する
異臭・変色が出る 雑菌の混入 容器と器具を必ず熱湯消毒する
撹拌しても分離しない サワークリームの温度が高い 冷蔵庫で1〜2時間冷やしてから撹拌する
バターが柔らかすぎる 洗いの工程で水分が残っている 冷水で3回以上洗い、しっかり絞る
日持ちが短い バターミルクの除去が不十分 洗い水が透明になるまで繰り返す

特に注意してほしいのは、生クリームの品質です。開封後に時間が経った生クリームは、すでに雑菌が増殖している可能性があります。開封したての新鮮な生クリームを使い、作業中は清潔な手と道具を使ってください。

また、撹拌の段階で「分離しない」という声をよく聞きます。これはサワークリームの温度が高すぎることがほとんどです。脂肪は冷えた状態のほうが結晶化しやすいため、必ず冷蔵庫で十分に冷やしてから撹拌に移りましょう。

市販品と手作りのコスト比較

発酵バターを手作りする場合のコストを、市販品と比較してみましょう(2026年6月時点の参考価格)。

項目 価格の目安 100gあたりの単価
自家製(生クリーム200ml+ヨーグルト) 約350〜500円 約400〜600円
よつ葉 パンにおいしい発酵バター(100g) 約300円 約300円
カルピス 特撰バター(450g) 約1,550円 約345円
エシレ 発酵バター(50g) 約550円 約1,100円

コストだけで見ると、市販の国産発酵バターのほうが手作りよりも安価です。自家製の価値は、コスト面ではなく「発酵の過程を自分の手で体験できること」「スターターを変えて風味を調整できること」「添加物が一切入らないこと」にあります。

醸造や発酵に興味がある方にとって、発酵バターの仕込みは乳酸発酵を身近に感じられる良い入り口です。味噌や塩麹の仕込みに比べて短時間で完成するため、発酵食品づくりの最初の一歩としても取り組みやすいでしょう。

実際に仕込んでみると:現場の声

発酵食品づくりを日常的に行っている方々からは、発酵バターについて以下のような声が聞かれます。

「味噌や塩麹を仕込み慣れていると、発酵バターの工程はとても簡単に感じる。発酵の温度帯も甘酒に近いので、ヨーグルトメーカーが1台あれば迷わず仕込める」という声が多くあります。実際、塩麹の作り方を経験した方であれば、温度管理と清潔さの重要性はすでに身についているはずです。

一方で、「最初は分離のタイミングがわからず、撹拌しすぎてしまった」という失敗談もあります。ホイップクリームの状態を過ぎてからさらに2〜3分で分離が起こるので、焦らずに待つことが大切です。

副産物のバターミルクについては、「パンケーキに使うと驚くほどふわふわになる」「カレーに入れるとコクが出る」といった活用法が共有されています。発酵バターの仕込みは、バター本体だけでなくバターミルクの活用も含めて楽しめるのが魅力です。

保存方法と賞味期限の目安

自家製発酵バターは保存料を使っていないため、市販品よりも保存期間が短くなります。

保存方法 保存期間の目安 注意点
冷蔵保存(5℃以下) 約2週間 ラップで密封し、におい移りを防ぐ
冷凍保存(-18℃以下) 約1〜2か月 小分けにして冷凍すると使いやすい

使いきれない場合は、早めに小分けして冷凍するのがおすすめです。解凍は冷蔵庫で半日ほどかけてゆっくり行うと、食感が損なわれにくくなります。

なお、バターの風味は時間とともに変化します。作りたては爽やかな酸味とフレッシュな香りが際立ちますが、冷蔵保存で数日経つと味がなじんでまろやかになります。好みの風味になるタイミングを見つけるのも、自家製ならではの楽しみです。

発酵バターの作り方に関するよくある質問

Q1:生クリームの乳脂肪分は何%以上が必要ですか?

乳脂肪分35%以上であれば発酵バターを作ることができます。ただし、42%以上の高脂肪クリームを使ったほうがバターの収量が多く、風味も濃厚に仕上がります。「純乳脂肪」と表記されたものを選んでください。植物性脂肪が混合されたクリームでは、脂肪の結晶構造が異なるため固まりません。

Q2:ヨーグルトメーカーがなくても作れますか?

作れます。夏場であれば室温(28〜32℃)に12〜24時間置くだけで発酵が進みます。冬場は炊飯器の保温モード(蓋を開けた状態)や、発泡スチロールの箱に湯たんぽと一緒に入れる方法で温度を保てます。温度計で40〜45℃を目安に管理してください。

Q3:発酵時間を長くすると風味はどう変わりますか?

発酵時間が長いほど、乳酸菌が生成するジアセチルの量が増え、より強い香りと酸味が出ます。6〜8時間では穏やかな風味、12時間以上ではヨーロッパの発酵バターに近い力強い風味になります。好みに合わせて調整してください。ただし24時間を超えると酸味が強くなりすぎることがあるため、まずは8〜12時間から試すのがおすすめです。

Q4:副産物のバターミルクはどう使えますか?

バターミルクには乳酸菌とタンパク質が豊富に含まれています。パンケーキやスコーンの生地に牛乳の代わりに使うと、ふんわりとした食感に仕上がります。スープやシチューのベースに加えるとコクが増し、カレーに少量加えると風味に奥行きが出ます。冷蔵で2〜3日、冷凍で約1か月保存できます。

Q5:有塩と無塩、どちらがおすすめですか?

用途によって使い分けるのがおすすめです。トーストやパンに塗って食べる場合は有塩(塩小さじ1/4〜1/2を練り込む)が風味を引き立てます。お菓子づくりや料理に使う場合は無塩のほうが味の調整がしやすくなります。迷ったら無塩で作り、食べるときに好みの量の塩を振るのがよいでしょう。

Q6:発酵バターが固まらない場合はどうすればよいですか?

まず生クリームの種類を確認してください。植物性脂肪が混合されたクリームでは固まりません。純乳脂肪のクリームを使っているのに固まらない場合は、撹拌前にサワークリームを十分に冷やしていない可能性があります。冷蔵庫で2時間以上冷やしてから再度撹拌してみてください。また、撹拌のスピードが遅すぎると分離しにくいため、ハンドミキサーの中速以上で撹拌することをおすすめします。

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まとめ:発酵バターの作り方のポイント

  • 材料は生クリーム(純乳脂肪42%以上)とプレーンヨーグルトの2つが基本
  • 発酵温度は40〜45℃、時間は6〜12時間が目安
  • 撹拌前にサワークリームを冷蔵庫でしっかり冷やすことが分離成功の鍵
  • バターミルクの洗い流しを丁寧に行うと保存性が向上する
  • スターターの種類や発酵時間を変えることで、好みの風味に調整できる

発酵バターの仕込みは、乳酸発酵の面白さを短時間で体験できる手軽な方法です。味噌や醤油のように何か月も待つ必要がなく、1日で結果がわかるため、発酵食品づくりの入門としても最適です。

まずは生クリーム1パックから気軽に試してみてください。うまくいったら、発酵食品の種類と製法の一覧も参考にしながら、ほかの発酵食品づくりにも挑戦してみてはいかがでしょうか。発酵・醸造業界の最新データは業界データまとめページで定期更新しています。

参考情報

  • 日本乳業協会「乳と乳製品のQ&A:発酵バターとはどのようなバターですか?」(https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_156_433/)
  • 日本醸造協会誌「食品とジアセチル ―古くて新しいトピックス―」99巻5号, 2004年(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/99/5/99_5_315/_pdf)
  • 雪印メグミルク「『発酵バター』が人気の理由とは?」(https://www.meg-snow.com/hokkaido-butter/knowledge/0002.html)
  • 農林水産省「バター等の需給及び輸入の状況等について」2025年9月(https://www.maff.go.jp/j/chikusan/gyunyu/attach/pdf/antei_kyokyu-111.pdf)
  • みんなの発酵BLEND「『発酵バター』ってなに?普通のバターとどう違う?」(https://www.hakko-blend.com/study/whats/13/)




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