最終更新: 2026-09-25
乳酸菌の一部には、花粉症の症状緩和が臨床試験で報告されている菌株があります。代表例がキリンの「KW乳酸菌(Lacticaseibacillus paracasei KW3110)」で、120名を対象にした無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、スギ花粉飛散初期の鼻症状スコアの有意な改善が確認されています。ただし厚生労働省も指摘する通り、食品によるアレルギー予防効果は限定的で、さらなる検証が必要な段階です。医薬品の治療を置き換えるものではなく、効果には個人差があります。この記事では、花粉症の症状緩和が報告されている乳酸菌株の研究内容と、味噌や漬物に含まれる乳酸菌にどこまで当てはまるのかを、発酵の専門メディアの視点で整理します。
乳酸菌は花粉症に効果があるのか|結論

結論として、乳酸菌の中には花粉症の症状緩和がヒト試験で報告されている菌株がいくつか存在します。ただし「乳酸菌全般」に共通する効果ではなく、KW3110やL-55などメーカーが特定した商業菌株を、一定量・一定期間継続摂取した条件での結果です。厚生労働省も食品による花粉症対策について「効果は限定的であり、予防効果の確認にはさらなる検証が必要」としており、症状が重い場合は医療機関での治療が前提になります。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 効果がある菌株の有無 | KW3110、L-55、BB536など一部の菌株で症状緩和の報告あり |
| 効果の程度 | 限定的。医薬品の治療効果とは別物で、個人差が大きい |
| 味噌・漬物の乳酸菌への適用 | 研究対象の商業菌株とは異なる野生株が中心のため、そのまま当てはまらない |
| 推奨される位置づけ | 医師の治療と並行する補完的な選択肢の一つ |
花粉症の症状緩和が報告されている代表的な乳酸菌株

花粉症関連の研究が報告されている主な乳酸菌株を整理すると、以下の通りです。
| 菌株名 | 由来企業・研究機関 | 報告されている内容 |
|---|---|---|
| KW3110(Lacticaseibacillus paracasei KW3110、KW乳酸菌) | キリンホールディングス | 無作為化二重盲検試験で鼻症状スコアの有意な改善を確認 |
| L-55(Lactobacillus acidophilus L-55) | オハヨー乳業 | スギ花粉症患者を対象とした臨床試験でくしゃみ等の減少を報告 |
| BB536(Bifidobacterium longum BB536) | 森永乳業 | 免疫バランスへの働きかけに関する報告があり、特定保健用食品の関与成分にもなっている |
いずれも属・種・株のレベルまで特定された研究であり、乳酸菌の分類そのものについては乳酸菌の種類と違いを徹底解説した記事で詳しく整理しています。
KW乳酸菌の研究内容|120名の臨床試験

花粉症関連の乳酸菌研究の中でも試験規模が大きいのが、キリンホールディングスのKW3110株です。軽症から中等症のアレルギー性鼻炎を持つ20〜64歳の男女120名を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験が実施されました。スギ花粉が飛散する1〜4月の12週間、死菌体50mg(1,400億個以上相当)を含む食品またはプラセボを摂取してもらったところ、花粉飛散初期にあたる4週目の時点で、試験群はプラセボ群と比べて鼻の自覚症状スコアが有意に改善し、戸外活動への支障も軽減したと報告されています。くしゃみ発作や鼻漏の頻度でも改善が確認されました。
作用の仕組みとしては、アレルギー反応に関わる免疫細胞のバランス(Th2優位の状態をTh1とのバランスが取れた状態に近づける働き)が関係していると考えられています。これは花粉というアレルゲンそのものを排除する仕組みではなく、体の免疫反応の出方を穏やかにする方向に働きかけるアプローチです。
L-55乳酸菌・BB536など他の菌株の研究
オハヨー乳業のL-55株(Lactobacillus acidophilus L-55)は、スギ花粉症の患者を対象にした臨床研究で、ヨーグルトの継続摂取によりくしゃみなどの自覚症状が減少し、血液検査によるアレルギー反応の指標が低下したことが日本アレルギー学会などで報告されています。森永乳業のBB536株(Bifidobacterium longum BB536)は、腸内の免疫細胞に働きかけて免疫バランスの改善を促すとされ、特定保健用食品の関与成分としても利用されています。
これらの研究に共通するのは、いずれも数週間から100日程度の継続摂取を前提に効果を評価している点です。単発で大量に摂取した場合の効果を示すものではなく、乳酸菌の効果とは何かを整理した記事で扱った「腸内環境・免疫」「生活習慣病リスク」「メンタル・睡眠」の分野と同様、菌株ごとの継続摂取が前提の研究であることに注意が必要です。
味噌・漬物の乳酸菌はどこまで当てはまるのか
ここまで紹介した研究は、いずれもメーカーが選び出した特定の商業菌株を使ったものです。一方、味噌やぬか漬け、キムチといった日本の伝統的な発酵食品に含まれる乳酸菌は、塩分濃度が高く栄養条件が厳しい環境に適応した野生の植物性乳酸菌が中心で、種類も株も研究対象とは異なります。醸造ナビとして明確にしておきたいのは、「味噌汁や漬物を食べれば、KW3110やL-55と同じ花粉症緩和効果が得られる」と単純に結びつけるのは正確ではないという点です。
植物性乳酸菌の中には胞子を形成して胃酸などの過酷な環境を生き延びやすい種類も確認されており、有胞子性乳酸菌とは何かを解説した記事で仕組みを紹介しています。腸内細菌と発酵食品の関係を体系的に知りたい方は腸内細菌と発酵食品の関係を解説した記事、発酵食品全体と免疫力の関係については発酵食品と免疫力の関係を最新研究から解説した記事もあわせてご覧ください。
摂取を始めるタイミングの目安
花粉症関連の乳酸菌研究の多くは、花粉飛散が本格化する前からの継続摂取を前提としています。KW3110の試験でも、飛散期に入ってからの摂取で4週目時点の改善が確認されており、免疫バランスへの働きかけが数週間単位で進む性質を踏まえると、スギ花粉の飛散が始まる時期(関東など多くの地域で2月頃)の1〜2ヶ月前、つまり12月から1月頃には摂取を始め、シーズン中も継続することが目安とされています。症状が出てから慌てて始めるよりも、飛散前から習慣化しておく方が、研究で報告されている条件に近い摂り方になります。
効果に関する注意点
厚生労働省は花粉症の民間療法について、「ヨーグルト、乳酸菌、ポリフェノール等における花粉症予防の有効性について報告があるが、その効果は限定的であり、予防効果の確認にはさらなる検証が必要」としています。また、患者自身の主観的な効果判定にはプラセボ効果の影響が大きいことも指摘されています。乳酸菌の継続摂取は、医薬品による治療を置き換えるものではなく、医師の診断・治療と並行する補完的な選択肢として捉えるのが適切です。症状が重い場合や市販の対策で改善しない場合は、自己判断を続けず耳鼻咽喉科などで相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q1: どの乳酸菌サプリ・ヨーグルトを選んでも花粉症に効果がありますか?
いいえ。花粉症関連の効果が報告されているのは、KW3110やL-55、BB536のように臨床試験で確認された特定の菌株です。パッケージに菌株名や根拠となる研究の記載があるかを確認することが大切です。
Q2: 味噌や漬物を毎日食べれば花粉症対策になりますか?
味噌や漬物に含まれる乳酸菌は、花粉症研究の対象となった商業菌株とは異なる野生株が中心のため、同じ効果がそのまま得られるとは限りません。腸内環境を整える働き自体は期待できますが、花粉症の症状緩和を目的とするなら、研究で効果が確認された菌株の食品を選ぶ方が根拠に沿った選択になります。
Q3: 薬をやめて乳酸菌だけで花粉症対策をしてもいいですか?
おすすめしません。乳酸菌による効果は限定的であり、医薬品による治療の代わりにはならないと厚生労働省も指摘しています。症状の管理は医師の治療を基本とし、乳酸菌の摂取はあくまで補完的な選択肢として考えてください。
関連記事: 乳酸菌は睡眠に効くのか|腸脳相関の仕組みと研究データ
関連記事: 乳酸菌とは?発酵のしくみと味噌・醤油での役割を解説
まとめ:乳酸菌と花粉症の関係を正しく理解するために
- KW3110やL-55、BB536など一部の乳酸菌株では、花粉症の症状緩和がヒト試験で報告されている
- 効果は菌株特異的かつ限定的で、乳酸菌全般に当てはまる話ではない
- 味噌・漬物に含まれる乳酸菌は研究対象の商業菌株とは異なる野生株が中心で、同じ効果を期待するのは正確ではない
- 摂取を始めるなら、花粉飛散が本格化する1〜2ヶ月前からの継続摂取が研究の条件に近い
- 医薬品による治療を置き換えるものではなく、医師の診断と並行する補完的な選択肢として捉える
乳酸菌の分類や種類ごとの違いをさらに詳しく知りたい方は乳酸菌の種類と違いを徹底解説した記事を、乳酸菌全体の効果について知りたい方は乳酸菌の効果とは何かを整理した記事をあわせてご覧ください。
この記事は醸造ナビ編集部が執筆しました。醸造ナビは味噌・醤油・酢・漬物など日本の発酵文化に特化した専門メディアです。詳しくは編集部についてをご覧ください。
参考情報
- 厚生労働省「花粉症の民間医療について」(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/okamoto.html、2026年9月確認)
- キリンホールディングス プレスリリース「乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110による軽症から中等症の花粉症症状の緩和を確認」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001357.000073077.html、2026年9月確認)
- キリン「乳酸菌Lacticaseibacillus paracasei KW3110(KW乳酸菌)研究レポート」(https://health.kirin.co.jp/kw/index.html、2026年9月確認)
- 日本アレルギー学会機関誌『アレルギー』「Lactobacillus acidophilus L-55含有ヨーグルト飲用のスギ花粉症に対する臨床効果の検討」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/61/5/61_KJ00008045719/_article/-char/ja/、2026年9月確認)


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